Tokyo Sweets Club 東京スイーツ倶楽部
9月定例会を終えて




9月例会に「ベルグの4月」の山本次夫シェフをお招き致しました。
以前よりシェフが手がけられてこられているアントルメ グラッセを紹介したくて企画致しました。当日は、シェフの人と生りを表すが如く どの作品もフランス菓子のエスプリを示しつつ、心温まるスイーツに堪能した例会でした。11月には 「カフェ・ダ・コテ」というショップ名で現在のお店のお隣に念願のカフェをオープンされるとの事。ますます山本シェフのおもてなしの想いが我々の心を癒してくれる物と信じております。次回は このお店を貸し切って 我が倶楽部のメンバーと触れるチャンスを作りたいものです。この度は 本当に数々の貴重なお話お聞き出来ました事に感謝致します。

 


東京スイーツ倶楽部


代表世話人


中村真也

 



 今回は、田園都市線沿線では知らぬ者の居ない老舗の名店、ベルグの4月の山本シェフにお越し頂きました。山本シェフといえば、何と言ってもアントルメグラッセ。9月といえど暑さの残るこの時期にぴったりのスイーツです。
 ベルグの4月というからには4月オープンだったの?それとも奥様のお誕生月が4月?などと想像がふくらみますが、4月は1年の始まりの季節。いつになっても初心を忘れない様にという願いが込められています。スイスで務めていたオテル・デ・ベルグのベルグと合わせ、店名にされたそうです。




【マロンパイ】


【マロンパイ】

オープン当初から出されている一品。発売当初は今ほど一般的ではなかったそうですがじわじわと人気が上がり、新聞に取り上げられた時は1日に1000個出たこともあるそうです。
一見カップケーキの様な外観で手のひらサイズですがなかなかボリュームがあります。しかし焼いたらすぐに敷いた紙の上に置いて余分な油を取っているので重くありません。
パイ生地は少々硬めに出来ていますが、食べてみるとサクッとザクッの中間くらいの心地良い食感です。全国で2人のシェフしか使用していない、発酵の度合いが違う特注の発酵バターを使用しています。中に入っている丹波産の栗は大粒でとてもほくほくしており、食べるだけで実りの秋を感じられます。





【ノワゼット】

【ノワゼット】

シンプルな見た目の中にも複雑な味わいが横たわるヘーゼルナッツとバタームースのケーキです。上のナッツの味が何とも言えない甘じょっぱさでそれだけで食べても美味しいくらいなのですが、これは濃い目のシロップに一晩つけてしみこませてから翌日オーブンで焼くので甘さが強く出るそうです。発酵バターは発酵のにおいが鼻につくという理由から、癖がなく味付けをし易いカルピスバターを使用しています。
ナッツの甘じょっぱさとバタークリームの甘さとが合わさって丁度いいと言うと、バタークリームってあまり美味しくないし……と思われる方も多いことでしょう。こちらをご説明する為には日本のケーキの歴史を少し紐解かなくてはなりません。
日本のケーキはバタークリームから始まりました。メレンゲとバターを合わせたクリームなのでそのまま食べれば美味しいのですが、大量生産の為に一度冷凍したものを解凍して使用するのが一般的でした。その工程を経ることでメレンゲがつぶれてただの甘いバターになってしまい、バタークリームは美味しくないというイメージが広がります。これが日本からバタークリームが衰退していった原因です。そこで、当時とは違う美味しいバタークリームを知ってほしいと正当なやり方で再現されました。確かに一口食べれば長年持っていたイメージが変わります。この出会いでバタークリーム革命を起こして下さい!





【ポップオーヴァー】

【ポップオーヴァー】

山本シェフがパティシエール育成の為にオープンしたハッピーバースデーの一番のヒット商品。そして今はもう作っていない幻の一品を特別にお出し頂きました。
シュークリームがペーパーカップに入っている形なのでまず見た目のかわいさに心惹かれます。皮の部分はシュー生地ではなくアメリカではパンとして売られているものです。しっかりしているのに食べやすい皮の中にはクリームがたっぷり!
パータシュー(一般的なシュー生地)は練るので腱鞘炎になりやすいのが悩みの種でした。そこで女性でも出来るお菓子作りの一環ということで、生地をドロッパーでプリン型に流していくこちらの製造工程を採られたそうです。このペーパーカップの中には、シェフのこだわりだけでなく溢れんばかりの愛情も詰まっているのですね。

【アントルメグラッセ・トロピカルマンゴー】 【アントルメグラッセ・トロピカルマンゴー】

ジュネーブで働いていた頃にアイスクリームをよく作られており、フレンチタイプのアイスはとても美味しいので日本でも味わってほしいと思い始められたそうです。アイスクリームケーキに力を入れているいくつかの某有名企業も山本シェフの作品を研究しているとか。 こちらは夏限定のアントルメグラッセです。さっぱりしたマンゴーシャーベットとココナッツアイスクリームのコクが絶妙に絡み合ってとけていき、いくらでも食べられます。丸くくりぬいたダックワーズではさんであり、更に上にもマンゴーがトッピングされています。 ひとくちにフルーツと言っても、マンゴーや洋梨は凍らせるとシャーベットの様になりますが、いちごは冷凍するとあまり美味しくないので出来るだけそのまま乗せる量を減らすなど材料によって工夫されているそうです。現在は15種類くらいのアントルメグラッセが商品化されていますが、それはそのままシェフの挑戦の歴史と言っても過言ではないかもしれません。



【アントルメグラッセ・ノワイヨー】 【アントルメグラッセ・ノワイヨー】

ノワイヨーの名の通り、アーモンドやピスタチオ、ノワゼット(ヘーゼルナッツ)などがたっぷり入ったバニラとキャラメルのアイスクリームです。上はキャラメリゼされており、台の部分は冷凍されているにも関わらずスポンジ状態が残る驚異のビスキュイジョコンド(アーモンドをすりつぶして混ぜた生地)です。 生地のふわふわにナッツがごつごつ、表面はパリッ。口どけの良いアイスクリームがそれらを包み込んで一体化させます。楽しい食感でカラメルとアイスの甘さが中和され、とても良いバランスに仕上がっています。 スタッフの間では一番人気のある一品だそうです。



【マカロン】

ノあのマカロンの巨匠ピエール・エルメ氏もリシャール社長を連れて来店したという究極のマカロン。
普通の作り方をするとぐちゃっと歯についてしまうので、シェフが食べた中で一番美味しかったラデュレのマカロンを改良して今の形にされたそうです。
フランスのものは甘過ぎるということで砂糖はあまり混ぜていません。その為ピエ(天板との間に出来るふくらんだところ)も艶も出ませんが、日本人に合うマカロンに仕上がりました。

この他に、薄い砂糖の中にゼリーが入っておりバジルで味付けをした薄氷の様なお菓子をお持ち頂きました。こちらは商品ではないのですが遊びで作られたそうです。和菓子と洋菓子をコラボレーションしたものは色々なところにありますが、流石にバジル味の薄氷は見たことがありません!こんなところにもシェフの研究熱心な姿が垣間見えますね。  大物でありながら、笑顔が素敵で気さくな山本シェフ。感想を発表する時も「厳しい意見の方が勉強になります」と常に上を目指されている姿が印象的でした。この仕事に対する姿勢がある限り、いつまでも春が続くに違いありません。山本シェフ、本当に有難うございました。




 

<文責>渡邉聡美

2012年11月22日